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筋萎縮性側索硬化症(ALS)はどんな症状があらわれる?
~発症から受診、診断まで~

筋委縮性側索硬化症(ALS)と診断された方の体験談

Cさん (50代、男性)
きんいしゅくせいそくさくこうかしょう
筋萎縮性側索硬化症(ALS)

【特徴】筋肉がやせる。発症から短期間で進行する。

①発症

手足に力が入りにくくなり、お箸やコップを落としたり、つまずいたりしやすくなりました。
Cさんの筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発症したとき、手足に力が入らなくなった

②受診1

3ヵ月後、右腕が上がりにくいことに気付き、五十肩だろうと近くの整形外科を受診。レントゲンなどの検査を受け、痛み止めをもらって帰宅しました。

③受診2

1ヵ月後、腕の筋力低下を感じて整形外科を再受診。医師から「右腕の筋肉がやせているので、一度脳神経内科に行ってみては」と言われました。しかし、仕事が忙しく、そのまま様子を見ていました。
Cさんの筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発症したとき、右腕の筋肉がやせた

③受診3

半年後、食べ物が飲み込みにくくなり、近くの耳鼻咽喉科を受診。検査では異常なしと言われましたが、この半年で急に体重が減少したことを伝えたところ、医師から「すぐに総合病院の脳神経内科に行くように」と紹介状を渡されました。
Cさんの筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発症したとき、半年で急に体重が減少した

⑤診断

数日後、総合病院の脳神経内科を受診。
これまでの不調を全て医師に伝えたところ「すぐに検査入院をしてください」と言われ、血液検査、筋電図検査、MRI検査などを受けて、『筋萎縮性側索硬化症』と診断されました。

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Dさん (60代、女性)
きんいしゅくせいそくさくこうかしょう
筋萎縮性側索硬化症(ALS)

【特徴】発症から短期間で急速に進行する。

①発症

なんとなくしゃべりにくいと感じましたが、一時的なことだろうと考えていました。
Dさんの筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発症したとき、しゃべりにくくなった

②受診1

1ヵ月後、ろれつが回らず、食べ物が飲み込みにくくなったので、かかりつけの内科医に相談しました。すると「耳鼻咽喉科で検査をしてもらってはどうか」と勧められました。
Dさんの筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発症したとき、ろれつが回らず、食べ物が飲み込みにくくなった

③受診2

1週間後、耳鼻咽喉科を受診。いくつか検査をしましたが異常は見られず、医師から「年をとって、飲み込んだりする力が弱ってきたのかもしれませんね」と言われ、しばらく様子をみることにしました。

③受診3

4ヵ月後、呼吸がしにくくなり、散歩で息切れするようになったため、かかりつけの内科を再受診。肺活量などの検査を行った後、医師から「急いで総合病院の脳神経内科を受診しなさい」と紹介状を渡されました。
Dさんの筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発症したとき、呼吸がしにくく、散歩で息切れ

⑤診断

翌日、総合病院の脳神経内科を受診。
紹介状を見た医師からは「すぐに検査入院をしてください」と言われました。血液検査、筋電図検査、MRI検査などを受けて、『筋萎縮性側索硬化症』と診断されました。

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筋委縮性側索硬化症(ALS)とは

筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう:ALS)は、脳からの指令を筋肉に伝える運動神経が何らかの原因で損なわれることで、指令が伝わらない部位の筋肉がだんだんと弱くなりやせ細って、思い通りに動かすことが難しくなる病気です。脳や脊髄などの中枢神経、知覚神経、自律神経は障害されにくく、視覚・聴覚といった体の感覚、内臓機能などは維持されます。

ALSの初期症状

ALSの初期にあらわれる症状は、どの部分の運動神経が損なわれるかによってさまざまです。典型的なALS患者さんでは、初期症状として四肢の筋力低下が約70%、球麻痺が約25%、体幹・呼吸障害が約5%の割合で起こるといわれています1)。目やまぶたを動かす筋肉や排尿・排便に必要な筋肉の症状は、初期ではあらわれにくいことが知られています。

手足の筋肉が弱る

通常、四肢の筋力低下は左右いずれかから出現します。筋肉がやせる・弱るということ以外にも、筋肉のピクつきや体重の減少も筋力低下を示す徴候です。最も多いのは片側の腕の筋力低下から発症するパターンです。手指が使いにくくなったり、肘から先の筋肉がやせて力が弱くなったりします。

このほかにも、足の筋肉がやせて力が弱くなる症状(例:足が前に出ない、しゃがんだときに立ち上がりにくい)で始まることもありますし、両側の肩周りの筋肉がやせ、力が入らないことから始まることもあります。

舌、のどの筋肉が弱る

舌やのどの筋肉が弱ってしまい、飲み物や食べ物がのみ込みにくい(嚥下障害)、話しにくい・発音しにくい・ろれつが回らない・ラ行やパ行がうまく発音できない(構音障害)などの、球麻痺と言われる症状が出ます。よだれや痰が多く出ることもあります。

呼吸する筋肉が弱る

呼吸する筋肉(呼吸筋)が弱くなると、日常の動作でも息切れをおぼえ、十分な呼吸がしにくくなります。

体重が減少する

ALSになると、エネルギーの消費量が増えるため、病気になる前と同じくらいしっかりと食事を摂っていても、体重が減っていくことがあります。舌やのどの筋肉が弱って嚥下障害を起こすことも体重減少につながります。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)にあらわれる、体各部の主な症状

1)Kiernan MC, et al. Lancet. 2011;377(9769):942-955.

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「ALSかも」と思ったらどうしたらいい?

ALSかもしれないと思ったら、「年のせい」「持病のせい」「たいしたことはないだろう」と自分で判断して放置せずに、なるべく早くかかりつけ医や脳神経内科(神経内科)を受診しましょう。

ALSはまれな疾患であり、似たような症状があってもALS以外の疾患である可能性も高いのですが、体重の減少や筋肉のやせ、ピクつきがあれば医師に伝えてください。

ALSになりやすい人の特徴があるか?

ALSが発症する原因は、まだ十分に解明されていません。神経の老化やタンパク質の異常など、さまざまな説があります。職業や身体活動、生活環境などとは無関係に発症する病気だと考えられています。また ALS患者さんの90-95%は遺伝とは無関係と考えられており2)、誰でもかかる可能性のある病気です。

ALSの発症のリスク因子として、年齢、性別、家族歴が挙げられます。発症率は加齢とともに上昇し、70歳代でピークとなります。男性の方が女性よりも1.3~1.5倍程度、発症率が高くなります2)

ALSは患者数の少ないまれな疾患で、国の指定難病に定められています。認定基準を満たしている場合は医療費の助成を受けることができます。

2)南江堂 筋委縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023

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