筋委縮性側索硬化症(ALS)とは
筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう:ALS)は、脳からの指令を筋肉に伝える運動神経が何らかの原因で損なわれることで、指令が伝わらない部位の筋肉がだんだんと弱くなりやせ細って、思い通りに動かすことが難しくなる病気です。脳や脊髄などの中枢神経、知覚神経、自律神経は障害されにくく、視覚・聴覚といった体の感覚、内臓機能などは維持されます。
ALSの初期症状
ALSの初期にあらわれる症状は、どの部分の運動神経が損なわれるかによってさまざまです。典型的なALS患者さんでは、初期症状として四肢の筋力低下が約70%、球麻痺が約25%、体幹・呼吸障害が約5%の割合で起こるといわれています1)。目やまぶたを動かす筋肉や排尿・排便に必要な筋肉の症状は、初期ではあらわれにくいことが知られています。
手足の筋肉が弱る
通常、四肢の筋力低下は左右いずれかから出現します。筋肉がやせる・弱るということ以外にも、筋肉のピクつきや体重の減少も筋力低下を示す徴候です。最も多いのは片側の腕の筋力低下から発症するパターンです。手指が使いにくくなったり、肘から先の筋肉がやせて力が弱くなったりします。
このほかにも、足の筋肉がやせて力が弱くなる症状(例:足が前に出ない、しゃがんだときに立ち上がりにくい)で始まることもありますし、両側の肩周りの筋肉がやせ、力が入らないことから始まることもあります。
舌、のどの筋肉が弱る
舌やのどの筋肉が弱ってしまい、飲み物や食べ物がのみ込みにくい(嚥下障害)、話しにくい・発音しにくい・ろれつが回らない・ラ行やパ行がうまく発音できない(構音障害)などの、球麻痺と言われる症状が出ます。よだれや痰が多く出ることもあります。
呼吸する筋肉が弱る
呼吸する筋肉(呼吸筋)が弱くなると、日常の動作でも息切れをおぼえ、十分な呼吸がしにくくなります。
体重が減少する
ALSになると、エネルギーの消費量が増えるため、病気になる前と同じくらいしっかりと食事を摂っていても、体重が減っていくことがあります。舌やのどの筋肉が弱って嚥下障害を起こすことも体重減少につながります。
1)Kiernan MC, et al. Lancet. 2011;377(9769):942-955.
▲ ページトップへ
「ALSかも」と思ったらどうしたらいい?
ALSかもしれないと思ったら、「年のせい」「持病のせい」「たいしたことはないだろう」と自分で判断して放置せずに、なるべく早くかかりつけ医や脳神経内科(神経内科)を受診しましょう。
ALSはまれな疾患であり、似たような症状があってもALS以外の疾患である可能性も高いのですが、体重の減少や筋肉のやせ、ピクつきがあれば医師に伝えてください。
ALSになりやすい人の特徴があるか?
ALSが発症する原因は、まだ十分に解明されていません。神経の老化やタンパク質の異常など、さまざまな説があります。職業や身体活動、生活環境などとは無関係に発症する病気だと考えられています。また
ALS患者さんの90-95%は遺伝とは無関係と考えられており2)、誰でもかかる可能性のある病気です。
ALSの発症のリスク因子として、年齢、性別、家族歴が挙げられます。発症率は加齢とともに上昇し、70歳代でピークとなります。男性の方が女性よりも1.3~1.5倍程度、発症率が高くなります2)。
ALSは患者数の少ないまれな疾患で、国の指定難病に定められています。認定基準を満たしている場合は医療費の助成を受けることができます。
2)南江堂 筋委縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023
▲ ページトップへ